同じ経験年数、同じ職種で転職相談にいらっしゃる方でも、内定後に提示される年収の上がり方は業界によってまったく違います。IT・Web業界からの転職と、メーカーや金融業界からの転職とでは、年収の「伸びしろ」の傾向がはっきり分かれるのです。

これは私の主観ではなく、800名以上の転職支援を通じて見えてきた、業界構造に根ざした傾向です。今回は、業界ごとの年収アップ幅の違いとその背景をまとめました。転職先の業界で迷っている方は、期待値をすり合わせる材料として読んでみてください。

この記事で比較する3つの業界

  • IT・Web業界:専門性が明確な職種ほど年収の伸び幅が大きい
  • メーカーなど伝統的業界:給与テーブルに沿うため伸び幅は小さいが安定性が高い
  • 金融業界:職種やポジションによって伸び幅の差が大きい

IT・Web業界は専門性が明確な職種ほど年収が伸びやすい

IT企業・工場・金融機関を表す3つの建物のイラスト、業界による転職市場の違いを表現

IT業界、特にWeb系企業は、他業界と比べて転職時の年収の伸び幅が大きい傾向があります。エンジニアやプロダクトマネージャーなど、専門性が明確な職種ほどその傾向が強く出るというのが、日々候補者を担当する中での実感です。

背景にあるのは、実力主義の評価制度と人材の需給バランスです。専門スキルを持つ人材の採用競争が激しい業界ほど、企業側が年収面で譲歩してでも採用したいという動機が働きます。逆に言えば、専門性がまだ明確に言語化できていない若手のうちは、IT業界であってもそこまで大きな伸び幅にならないことも珍しくありません。

メーカーなど伝統的業界は年収レンジより安定性を重視

一方、メーカーなど伝統的な業界では、年収レンジ自体が組織の給与テーブルに沿って決まっていることが多く、転職による年収アップの幅は比較的小さくなりがちです。等級制度がしっかり整備されている分、個人の交渉力だけで大きく年収を動かすのは難しい構造になっています。

ただし、これは悪いことばかりではありません。年収の伸びが緩やかな分、賞与・退職金・住宅手当といった福利厚生が手厚く設計されているケースが多く、安定と引き換えの緩やかな年収カーブだと捉えると納得しやすいと思います。転職相談の場でも、目先の年収アップよりも安定性を優先したいという方には、こうした業界の特徴を丁寧に説明するようにしています。

金融業界は職種・ポジションによって差が非常に大きい

金融業界は、職種によって差が非常に大きいのが特徴です。専門職やポジションによっては大幅な年収アップが見込める一方、そうでない場合はメーカーに近い水準に落ち着くこともあります。

専門職とそれ以外で二極化しやすい

同じ金融業界でも、資産運用やM&A関連など専門性の高いポジションと、一般的な事務・オペレーション系のポジションとでは、転職時の年収の動き方がまったく異なります。金融業界だからと一括りにせず、職種単位で相場を確認することが欠かせません。

私が担当した相談の中でも、「金融業界だから年収が高いはず」という思い込みだけで転職活動を始めてしまい、実際の提示額とのギャップに戸惑う方を何人か見てきました。業界のイメージと、自分が就く職種の実態は分けて考えた方がよいと思います。

注意: ここで紹介しているのはあくまで支援してきた中で見えてきた一般的な傾向です。同じ業界・同じ職種でも、企業の成長ステージや経営状況によって年収の伸び方は変わります。最終的には応募先ごとの実態を確認してください。

業界の傾向を転職活動の期待値調整に活かす

業界研究を転職活動に活かす3つの視点をチェックリスト形式で表した装飾イラスト

  • 希望する業界の年収レンジが、給与テーブル型か個人の専門性重視型かを事前に把握する
  • 業界のイメージだけで判断せず、実際に応募する職種単位で相場を確認する
  • 年収アップ幅だけでなく、福利厚生や生涯収入の観点も含めて比較する

業界の傾向を知っておくことは、転職活動における期待値のすり合わせにとても役立ちます。同じ経験年数・同じ職種であっても、業界が変われば「普通どのくらい上がるものか」という基準そのものが変わってくるからです。

まとめ:業界研究は年収交渉の土台になる

同じ経験年数・同じ職種であっても、業界によって転職時の年収の上がり方には大きな違いがあります。IT・Web業界は専門性の伸びしろが年収に直結しやすく、メーカーは安定重視、金融は職種による二極化が起きやすいというのが、支援してきた中での傾向です。

業界ごとの「普通の伸び幅」を知っておくことは、内定条件を冷静に評価するための土台になります。次回は職種別の違いについても書いてみようと思います。